冷房の効いた店の中で懐かしい人に出会った。
今はその地域ではメール便を配達していないが以前配達していて・・花壇のお花を切り取って分けてくれた奥さんである。
配達と言う仕事は単純な仕事だけれど行き交う人と挨拶をし、可愛い子供づれには「可愛い子ですね」と褒めてあげ、お花の手入れをされていると「綺麗ですね」と声を掛けてきた。そのうちの一人である。
「お元気ですか」
「ああ・・あの時の・・最近配達にこられないので病気でもされたのかと心配していたのよ」
「今はお宅の区域は他の人が配達をしてくれるので僕はご無沙汰をしています。団地の楽なところを配達しています」
「そうですか・・お元気でよかった・・お会いできて嬉しい」
そして長い立ち話になった。
「実は2年ほど前に胃癌になってね、それが早期発見で内視鏡手術で痛くなかったんですよ」
「そうでしたの、そういえば・・お見かけしくなって2年ほどになりますねー」
「もう2年にもなるのですかねー」
「実はね、近所の人には話してはいないのですが私も癌の手術をしたの、悲しくて悲しくて泣き暮らしたわ」
「そうでしたか、近所の人に話しても話の種にされるばかりですから、話さなくて良かったですね」
「同じ癌で入院して知り合ったお友達と時々話し合って居るの」
「気心が判る人が良いですね」
「あ・・電話番号を教えてくれない・・暇があったら遊びに来てね」
「つい最近だけれどMRIで頭の検査をして左半部の動脈血管が写っていなくてね」
「エ!そうなの」
「先生の話だと2年だか3年だかいつか分らないけれど、少しずつなったのだそうです。」
「・・そうなの」
「人間の体は他の部分がそれを補うことがあるのだそうです、それでこのように普通に暮らしています」
僕はありあわせの小さな紙切れに電話番号と住所と名前を書いてお渡しした。
そして近いうちに遊びに行く事を約束した。
・・一見幸せそうに見えても人は悲しみを背負って生きているのだ。
癌と聞いて、悲しくて泣き暮らしたと奥さんは話された。癌と言えば死を連想してしまうほど恐れられている病だ。
生老病死・・その悩みと悲しみにどう立ち向かうか・・僕の人生はこれからだ。
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- 2011/07/08(金) 21:01:15|
- 小説・エッセイ|
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