走れ!でんどう三輪車
齢70にしてブログなるものに挑戦!人生まだまだこれからですよね(^^)//。俳句や詩歌を趣味として又釣り人として、 、、、、、はたまた「でんどう三輪車」として、日々の出来事を綴ります。

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黒いチューリップ(再)

2014年横浜球場で撮影黒いチューリップ 
  黒いチューリップ    いのうえ つとむ

四月半ば,春といっても寒い日が続くこのごろ、今日も寒冷前線が空を覆っていて自転車のハンドルを握る手が冷たい。
メール便の配達コースで庭に花が咲き競う住宅地がある。今・流行のガーデニングというのだろう、三色すみれの鉢が並び枝垂れ桜も咲いている。四季を通じてそれぞれの花の競演で見飽きることは無い。
その住宅の通りに「いちご堂」という小さな看板がある。鍼灸院の看板で毎日のように配達する家である。
中年の婦人がチューリップを鋏で切っておられた。鍼灸院の先生である。「今日は、綺麗なチューリップですね」と挨拶して、メール便の封筒を手渡そうとすると
「郵便屋さんですか、お花を持っているので、手が離せないのよ・・ポストに入れてね」
「郵便屋ではありません、メール便です、じゃあ、ポストに入れときますね」
「そうして下さい」
「大きなチューリップですねえー」
「でも、すぐ散ってしまうの」
「この黄色の花は芯のところが黒いのですね」
「そうなの?・・私は見えないのよ、だけれど紫の濃いのと違う?」
「そういえば紫かもしれませんね」
前にも挨拶をしたことが一度あったが話をして初めて目が不事由だと知った。
普通の眼鏡をかけておられて目が見えないことが外見では分からなかった。
「こちらの赤いチューリップのほうが濃い黒い色に見えますね」
手に取って教えてあげると
「どれですか、これ?」
「そうですよ、よく見ると紫の濃い色ですね」
花に触れながら思慮深い顔をされて
「オランダはチューリップの国でしょ、黒いチューリップで戦争したと言うからね」
「黒いチューリップ・・そんな謂われがあるのですか?」
「私は事故で見えなくなったの、最初は黄色い色や赤い色から見えなくなったのよ、色盲ってあるでしょう・・ああゆう感じからね・・見えなくなったの」
「それは大変ですね」
「私は見えないけれどね、お客さんが喜ぶと思ってね、ガーデニングの専門の方にお願いしているのよ。ところで貴方のお名前は?」
「井上と言います」
「どちらにお住まいなの。洋光台?」
「はい、洋光台の五街区に住んでいます。うちの妻がローアなのですが、途中で失明されて大変ですね」
「いいえ、そうでもないわ。・・貴方手話されるの?」
「僕はしません、口話です」
「唇を見て話すのね。私もね、点字しないのよ。小説もテープがあって聞けますからね」
「ああ!僕の同級生の仲の良い名古屋の友達が、かれこれ20年ほどボランテアで小説など本の朗読をテープに入れていますよ・・夜中の2時ごろまで起きているとか」
「そう!有難いわね。人のためになることは良いことだわね。そのお友達・・良い人生ね」
「なかなか出来ない事ですよね」
「お宅の近くに、・・・大嶋さんというローアの方がいるでしょう」
「妻の友達です」
「一度来られたのよ。災難にあったときに連絡できる会を作って市と話を進めているのだけれど中々はかどらなくてね」
「そうなんですか」
「でも最近は好くなったわね。ここのところ市のほうも好意的で好くなったわ。皆が変わってきたわ・・先日も二人の方が道案内をしてくれたの。以前はね、石をぶつけられたからね」
「最近はテレビでも手話をやるし、社会の目が変わってきましたね」
「私たちは杖があるから外見で分かるから良いけれど、ローアの人は見た目で分からないから大変ね、知り合いが張り倒されたことがあったからね」
「以前はオシだのツンボなのと言われていたからね・・妻の身内も自分の子供が嫁にもいけなくなるからと・・遠い宇都宮の聾学校に入れたのですよ」
「そう・・私ね一度懲りたことがあるの。手話通訳が良くなくて誤解されてね。障害者同士でも意思の通じないことがあってね・・理解されるのが大変でしたよ」
「手話も難しいからね」
「私パソコンをやっているのよ!文字が音声に変わるの!」
「そう!凄いね!僕もブログで詩やエッセーを書いているのです」
「何人の人が読んでくれているの」
「一日150人ぐらいかなあー」
「凄いはねー・・読みたいわ。今度機会があったら読ませてもらうわ」
「ぜひ読んでくださいね」
「私ね、目が見えなくなってからお声で人柄が分かるのよ。今のほうが前より人生が充実しているのよ。見えるときは見逃していたことが・・よく見えるのよ」
「僕のように目が見えると表面だけしか見ていませんからね」
「外見で判断するのではないのよ。心の奥が見えるのね。私って・・怖いわよ!・・フフフ」
「・・・・・」
しばらく間をおいてから笑顔で
「貴方いい人だわね」
僕は礼を言って、お暇した。
赤いチューリップも黄色いチューリップも芯の周りが濃い紫色の黒い色に見えることを、このとき・・しみじみと見ることができた。
いつもは通り一遍の見方で・・ただ「綺麗だだなー」と眺めて見ていた花である。

(2006・4・16)


この『黒いチューリップ』のエッセイを書いてから時のたつのは早いもので今年は2014年ということで8年にもなる。
仲の良い女性の友達から・・金銭のやり取りで・・この人が・まさか?と驚くことがあり「人が信じられなくなりました」と打ち明けてくれて・・この『黒いチューリップ』を思い出し、あらましを話した。そしてブログに再び乗せることにしました。(時の経つのは早いもので今年は2015年になった) 




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  1. 2015/01/08(木) 13:14:24|
  2. 小説・エッセイ|
  3. トラックバック(-)|
  4. コメント:2

  

コメント

きのさんコメント有り難う!

読んでいただいて本当にうれしいです。体が不自由でも決して不幸ではないということを教えられました。忘れることのできない貴重な出会いでした。有り難う。
  1. 2015/01/15(木) 23:08:08 |
  2. URL |
  3. 走れ‼でんどう三輪車 #-
  4. [ 編集]

こんにちは。昨日初めてここへ来ました。黒いチューリップ、とても心にしみました。
  1. 2015/01/14(水) 21:47:26 |
  2. URL |
  3. きの #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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