ファイテンの店長さんの元気なパワーをもらって帰り道のことである。
横浜銀行の前の交差点を渡りきり、白い杖を壁に当ててから方角を確かめて左に曲がり歩いている後藤さんを見かけた。
杖を頼りに歩く人たちの苦労をこのとき垣間見た。
「後藤さん」・・「後藤さん」と後ろから声をかけて並んで歩いた。
「どうぞ」と言って左手を取ると
「私が・・有り難うございます」と言って後藤さんが僕の右肩に手をかけて並んで歩いた。
後藤さんは全幅の信頼で僕の目を頼りに人ごみの歩道を歩いた。
オリンピックのスーパーの前なのでとりわけ混んでいた。
子供が前方から自転車を飛ばしてきた。このときは・・杖と音を頼りに歩くことの危険さを感じた。
「井上さんお元気でしたか」
「最近退院したばかりです」
「前と同じ・・心臓ですか?」
「いいえ関節ですよ・・激痛で救急者で運んでいただきました」
「そうですか、それは大変でしたね」
「血液検査やあらゆる検査をしましたよ・・でも原因がわからないのです」
「いろいろな検査をしないと病院も経営が成り立たないからね」
「骨密度の検査もしてもらいました・・最低70%なければいけないのを68%しかないのです」
「骨が弱ると恐ろしいですよ・・体重で圧迫骨折しますからね」
「歩いて体力の回復を!と励んでいます」
「片足で立つだけでも骨密度をよくしますからね」
「それは簡単ですね」
「無理はしないでくださいね」
話ながら歩くのですが後藤さんの足が軽く早いので、病み上がりの僕には、後藤さんについて歩くのが少し辛かった。
後藤さんは蒲田の整形外科医に勤めている。
「出勤は早いのですか」
「はい混むと困りますから」
「・・6時過ぎには家を出るのですが、蒲田で乗り換えるときは8時になり・・ずいぶん混んできます」
「勤め先が近くだといいのにね」
「近場だといいけれど・・なかなかありませんね」
車の来ないのをよく見て道を横断した。階段を上り、後藤さんの住いの団地の入り口の前で別れた。
「ありがとうございました」
後藤さんの爽やかな明るい姿を見送り、目が見えること耳が聞こえることを改めて幸せに思った。
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- 2014/07/12(土) 10:25:02|
- 小説・エッセイ|
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