あと一歩 (絵夢さんの詩)
駄目なら やり直せば良い
何度も やり直せば良い
生きている時にしか やれません
生きている今しか 言えません
生きている今 この時
(2006.03.01 Wednesday)
(絵夢さんは1年半前から病と闘い不自由な体でデイ・サービスのボランテアにも挑戦して頑張っています・・素晴らしい詩人です)
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あと一歩 いのうえ つとむ
まだ眼が見える!
まだ耳が聞こえる!
其処に喜びを見出し
感謝の心で
心の痛みも
体の痛みも
歯を食いしばって
痛みを耐えて
自分の可能性を信じ
信じきって
希望を持って
勇気を持って
今日も前進!
明日も前進!
あと一歩
(2006・3・23) NO301
(この詩は絵夢さんのお体の回復をお祈りし絵夢さんの詩に寄せて)
この詩をもって・・301歩の「第一歩」を皆さんと共に前進していきたいと思います。
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- 2006/03/22(水) 12:19:14|
- 私のうた|
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袖刷りあうも・合席の人 いのうえ つとむ
小寒い風を頬に受けながら大船駅のホームで下田行きの特急・踊り子号のスマートな電車を見送った。空は薄曇りであったが3月12日午後1時ごろ家を出て、いつものように洋光台の駅から根岸線に乗って来た。
しばらく待っていると東海道線の熱海行き普通電車が到着した。
乗車すると横並びの長い座席ではなく、珍しく4人掛けの合い席であった。
ほとんどの座席は空いているようには見えなかったが、よく見渡すと空席が一つあり其処に腰を落ち着かせた。
3人座っていて窓側の男性は二人とも知り合らしく会社の同僚のうわさ話をしていた。
前の座席の眼鏡をかけた男性は関係ないと見えて黙って俯いていた。
花粉症なのだろう憂鬱そうに時折り鼻の上に手をやりマスクを直して又元のように眼を瞑って俯いてしまった。
横の座席に4人組がいて中国人なのか何にやら中国語で話していた。
男女向き合い座って話していたが、大声で喋り捲る男が居り、言葉が解らないので煩くて仕方が無かった。
藤沢の駅に着くと後ろの座席が空いたので、これ幸いとばかり座席を移動した。
この座席は窓側に二十歳代の若い男女が向き合って座っていた。
話の様子ではどうも恋人らしく次のデイトの相談なのか、青年が女の子にどうしようかと聞いていた。
「ホテルが良いか、旅館が良いか」
「それとも民宿が安くて良いかなー」
男は選択を彼女に託すように聞いていた。
「民宿が安いから、民宿が良いわ」
小柄な若い女が頷きながら答えていた。
女は特別美人というのではなく、ごく普通のOLふうに見えた。
男のほうは最近流行の坊主頭であごひげを伸ばしていた。
「いつが良い」
「・・・・・」
「時間は、何時にしようか」
「・・・・・」
面白いカップルだなーと聞き耳を立てていたが、
眼と眼を合わせることで通じるのか、女の返事が小声なので聞き取れなかった。
二人は楽しそうに話しながらシュウマイ弁当を開けて食べ始めた。
「弁当のご飯・・うまいなー」と言いながら
男が蓋に付着したご飯を笑いながら舐めると
「よしてよ、みっともないよ」
女は上目使いでなじるように小声で言った。
「何処でも買えるけれど・・やはり横浜だね」
「この魚も美味しいよ」
二人はシュウマイ独特の匂いをただよわせ美味しそうに食べていた。
生唾を飲みながら弁当を横目で・ちらっと覗いて窓の外を見ると、梅の花が咲いて次々と後ろに消えていった。
小田原の梅の名産地「曽我の郷」だ、梅の花が白く家を囲むように咲いていた。
相変わらず空は曇っていて富士山は残念ながら顔を出さず見えなかった。
やがて電車が小田原駅に停車したので僕は二人の恋人達ちの話し声を耳に残しながら電車を降りた。
二人の恋人を乗せて電車は熱海に向かって発車して行った。
小田急の電車はすでにホームに来ていて急いで飛び乗った。
早川が流れにそって箱根に向かって電車は走った。菜の花と夏みかんの黄色い色がのどかな家並みの風景を暖く感じさせた。
しばらくして湯元の駅で二両編成の登山電車に乗り換えた。
少し並んだお陰で満員であったが幸い座ることが出来た。
隣に座った僕と同じぐらいの老人はワンカップのお酒をあをって
「一人で温泉かね。良いなー・・彼女が向こうで待っているんだろうなー」小指を立て一杯機嫌で話しかけてきた。
「いませんよ、そんなの」と答えると
「何、いない・・それは寂しい、貸してあげるよ」
「アハハ」と前の座席のご婦人を指差して愉快そうに笑っていた。
お酒というものは、こんなにも朗らかにするものかと思った。
絹のような細い雨が降って来て登山電車の窓を少し濡らしていた。
大平台の駅に着いたときは、いつか雨も止んで何とか温泉に濡れずに駆け込んだ。
日曜日なので姫の湯は平日より込んでいた。
例のように3時から6時まで長時間を温泉でくつろいだ。
小雨が落ちてきそうな空模様だけれど、窓から梅の花がちらほらと咲いて見えて、これ以上は無い贅沢な入浴だとつくずく思った。
箱根の山からの帰りの人達だろうか、若い人が多かった。
一時き降った小雨は幸い止んで帰りの電車にも雨に濡れずに乗れた。
登山電車から湯元の駅で小田急に乗り換へる時、大騒ぎをしている人達がいたので、それを避けて別の車両の座席に移った。
前の車両まで来て見ると数人の乗客で静かだった。
窓の外に眼を移すと、早川の清流が窓枠に動く風景画のように見えた。
「この川も鮎の川だな」と川の流に気を取られていた。
眺めているうちに瞬く間に小田原駅に到着した。
小田原でJRに乗り変えたが、東京行きの普通電車は満席だった。
コンビニで買った230円の弁当を食べながら隣の人の話が嫌でも耳に入ってきた。
「私はね、20年前のことだけれど、庭に生えているハコベを野菜代わりに食べてねえ」
60代の婦人が昔を思い浮かべるように言うと
「ハコベは食べられるのよね」
と向かいの座席の30代の婦人が合図地を打つように小声で返事をしていた。
「その浮いた分を貯金して2年で100万円ためたわよ」
年配の婦人はやや得意げな顔で話し続けた。
「ハコベは野草だから体に良いのよ」
「凄い!・・私は特売で何か買い、その浮いた分・・儲けた!と思って ケーキか何か買って食べてしまうわ」
若い方の婦人が苦笑いをしながら答えていた。
「それでは・・ほら!今テレビの大河ドラマの・・山内一豊の妻にはなれないわよ、駄目よ!そんなんじゃ」
年配の婦人が、主婦はこうあるべし、と諭すように言った。
母と子の年齢差ではあるが二人の話の様子だと実の親子ではなさそうだ。
どこかまだ少し遠慮がちな話し振りから思った。
国府津の駅に付くと反対側のホームに、新宿直通の快速電車が来て、この方が早く大船に着くので急いで乗り換えた。
東京行きの人はこの新宿直通の電車では行けないので東京行きの普通電車に残っていた。
乗り換えた車両には誰も乗って無く、新しいのでグリーン車に乗った良い気分だった。
大磯の駅で50代そこそこの婦人が両手に荷物を抱えて前の座席に座った。あまり汗をかいているので
「暑いですか」と聞くと
「今、お風呂に入ってきたばかりなの」
「この電車に間に合わないと・・と思って急いで走ってきたのよ」
「週末はこの大磯に来るの」
「家は恵比寿なんだけれどねー」と立て続けに話してきた。
「良いご身分ですねー」と言うと
「そうではないのよ、母がボケてきて心配だから来るの、普通の日は介護の人が見てくれるけれど、土日ぐらいは自分で見てあげないとねー」
「痴呆で一番心配なのは、火事が一番怖いのよ!火の不始末だよねー、ボケているから怖いのよ」
「私の本が無いので聞くと・シラン・・と答えるだけで、押入れに隠してあるのよ」と笑いながら言っていた。
よくしゃべる人だが嫌みは無く 感じの良い人だった。
親を見捨てる人が多いこの時代なのにと、この婦人の苦労話を聞きながら、まもなく大船駅に着いた。
「さよなら・・お元気でね」
「うん、又お会いできたら良いね、バイバイ」
又いつでも逢えそうな雰囲気のお別れだった。
外出すると人と出会う、ほんの一時だけれど、電車に乗って知らない人と座席が合席に成る。
感じの良い人だと人生を豊かにしてくれるような良い気分になるものだ。
狭い食堂に入った時
「お客さん合席でよろしいですか」と店員に聞かれ、
「はい」と答えて、何処の誰だか知らない人と合席でカレーライスを食べることもある。
(2006・3・19)
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- 2006/03/19(日) 10:01:22|
- 小説・エッセイ|
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